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INTERVIEW

宮本 涼平  Ryohei MIYAMOTO

情熱がなければなにもはじまらない

posted on 2010.12.3


 

いわきに恩返しがしたい。いわきの若者たちに活力を与えたい。そんなイベントを、いわき市出身の大学生が開くという。殊勝だなと思う反面、「なんだか優等生すぎない?」という思いも。聞けば、そのイベントを主催する学生の1人は小名浜出身なのだという。1人の “クソまじめ” な学生を突き動かすものはいったい何なのだろう。


twitterに「突然なのですが今夜お会いできますか?」というDMが入っていたのは、11月11日の15:50。もちろん、それ以前にコンタクトは取っていたけれど、ずいぶんとまぁ唐突な面会の申し入れだ。偶然チェックしていたからいいものの、社会人の僕をなんだと思ってるんだ、なんて少しだけそう思ったけれど、僕は、彼から連絡が来ることがなんとなくわかっていた。もしかしたら、待っていたのかもしれない。

 

17:00。仕事を終え、帰宅するとすぐに着替え、車で待ち合わせ場所へと向かう。小名浜の主婦たちが買い物に勤しむその場所へ現れたのは、いかにも律儀な好青年の雰囲気を醸し出した、1人の長身の青年だった。僕たちは握手を交わし、簡単な挨拶をして、三崎公園のそばのカフェへと向かった。

 

「宮本涼平です」。抑えのきいた少し低い声に緊張の色はあまり感じられない。聞けば、これまで大学のボランティア団体などを通じてさまざまな活動をしてきたそうだ。厳しい就職戦線をくぐり抜け、広告業界への就職も決まったというから、人前で話すことなど大して苦にはならないのだろう。まぁ、人前で緊張して話せないなんて大学生が、そんな大それたイベントは企画しないだろうけれど。

 

彼は、今年の10月、iups(アイアップス)という団体を、友人3人と立ち上げた。若者の力で、いわきを、福島を、日本を元気にしたい。そういう大きな目的があるのだという。「i」は「いわき」の「i」であり「私」の「i」。「up」は立ち上がる「stand up」の「up」。「s」は、複数形の「s」。つまり、地域の問題を他人事ではなく自分の問題として捉え、行動するために立ち上がり、1人ではなく協調を通して問題を解決していこうという意味だ。

 

「実は、中学校くらいの時から小名浜で何かしたいねって友だちと話をしていて、サイゼリヤによく集まってました。具体的なアイデアはなかったけど、とにかく何かできたらいいねって」。そのときの他愛のない会話が大学生の今まで続いていることに、僕は少し驚いた。中学時代なんて、部活と遊び以外考えるヒマなんてないのが普通じゃないか。ところが彼は、中学生にして「自分の住んでいる街で何かがしたい」と考えていた。「サイゼリヤに集まる」なんて微笑ましい学生らしさを差し引いたとしても、ちょっと立派すぎる中学生じゃないか。

 

そんなふるさとへの思いが、より具体的になってきたのは、大学に入ってからのこと。「やっぱり地元を離れたってことがきっかけになって、親って偉大だなって思うようになったんです。自分で生活したり、アルバイトしたり、お金稼ぐのって大変だなって気づいて、恩返しじゃないけど自分を育ててくれた存在に何かができたらいいなって」。中学生のときの「夢想」は、少しずつ「使命」と呼べるものに変容していた。ふるさとへの思いは、今も日に日に強くなっている。

 

 

宮本くん率いるiupsは、今年の12月に「つながりカフェ」というイベントをいわきでも開催する予定だ。しかし、iupsのメンバーはあくまで「在京」の大学生が中心。いわきでの仲間探しは簡単にはいかないようだ。

 

「僕たちが伝えたいことを、そのままダイレクトにいわきの大学生が欲しているかはわかりません。だからといって地域振興への意識の高い学生だけを集めても、イベントを開く意味がなくなってしまう」。そう懸念を話した宮本くん。確かに、東京での生活で「ふるさと」への思いを強くした学生たちの周波数と、生活基盤をずっといわきに持ち続けてきた学生の周波数を合わせるのは難しい。

 

さらに、iups自身の「今後」にも課題が残る。「新聞記者の方に、東京に住んでる人たちがいわきに対して何ができるのか、いわきに戻らないのに今後の展開はどうやって維持していくのかといった、痛い質問をされてしまいまして…正直甘く考えていました」と宮本くんは唇をかんだ。ふるさとへの気持ちをうまく落とし込めないことへの苛立ち。優等生は、この日はじめて、苦虫を潰したような表情を見せた。

 

僕も確かに気になってはいた。宮本くんの発言が優等生すぎることだ。アツい思いはあっても、それを続けていかなければ意味がない。独りよがりになったら、誰もついてこられない。僕と宮本くんは、コーヒーを飲みながら、そんな話をしていた。僕が話すことを聞き漏らさないよう、僕の眼を見据えて「はい」「はい」と頷く宮本くんに、僕は重ね重ね「本当に真面目なヤツだな」と思った。ところが、話をしてみると、その真面目さは正直僕の想像を越えていた。

 

「宮本くんを宮本涼平たらしめているものはなんだろう」と僕は聞いた。すると宮本くんは、「自分から “生真面目さ” を取ったら何も残らない」と言った。「正直僕自身は真面目なほうだとは思ってないんですけど、回りからはすごい真面目だって言われるんです。硬いんですかね。真面目だって言われて、反発したくなる自分もいるんですけど…」。

 

そんなことを、これまたクソ真面目な表情で語り出す宮本くん。情熱だけを拠り所に語る姿に、僕は大学時代の自分を思いだした。やる気さえあればなんだってできる。そう信じていたあのころの自分を。

 

宮本くんは、無謀なまでのそのクソ真面目さで、いわきと向き合っている。徒手空拳で戦車に向かうようなものかもしれないけれど、「やってみなければわからない」と言われれば、「そうか、やってみろ」と言うしかない。宮本くんは、情熱を資本にスタート地点に立った。誰もが「準備されたライン」にしか立とうとしない時代に、彼は、自分だけの出発点に立ったのだ。それだけで、立派じゃないか。

 

 

大学2年のとき、宮本くんは「ハタチの約束」を自分に課した。富士山登山。海外への一人旅。インターン。大人が見たら「そんなの簡単」だなんて一笑に付してしまうかもしれないけれど、自分に課した約束を果たすことで、宮本くんは大きな自信を得た。

 

「目標を毎日毎日意識していたわけじゃないんですが、年末振り返ってみたら、全部の目標を達成してたんです。動けばなんとかなるんじゃないかって。誰かが動くのを待ってるよりも、とにかくやってみるのが大事なんだって気づいたんです」。

 

たぶん、今回のイベントも「とにかくやればなんとかなる」、そんな風に考えているに違いない。それを「計画性がない」なんて言ってしまうのは簡単だ。無謀な挑戦が大きな実を落とすこと、情熱や志がなければ、どんなに素晴らしいアイデアも腐ってしまうことを、僕たちは知っている。それなのに、大人になると「気持ち」や「感情」に蓋をして、勝算ばかり求めてしまう。だから、宮本くんのアツい思い、その「青臭さ」、僕は宝物だと思う。

 

「いわきが元気になれば、日本をつくるひとつひとつの単位が元気になる。日本が元気になるには地方が元気にならなければいけない。それには、やっぱり情熱しかないと思います」。今回のイベントはいわきの大学生同士のつながりを作り、地元にフォーカスした大学生活のきっかけづくりを目指している。資本は、やっぱり「情熱」。みんながアツい思いを持ってやってくる。それはけっこうスゴいことではないだろうか。

 

「そんなに甘くはねえぞ」だなんて大人の立場で言いたくなってしまうのは、きっと彼の情熱が、少しうらやましいからかもしれない。もっとシンプルに、情熱がつくる若いいわきの姿を想像してみた。帰りの車を運転しながら、少しわくわくしている自分にふと気づいた。宮本くんのはにかんだ笑顔が、目の前に見えるような気がした。

 

information

つながりカフェ in ふくしま

【日時】2010年12月26日(日)14:30~17:30(開場14:00)

【場所】いわきLATOV 6階企画展示ホール

【内容】福島県出身の起業家のプレゼンが行われるほか、若者たちがふるさとへの思いをぶつけるトークバトルなどが予定されている。詳しくは こちらへ。

 

text & photo by Riken KOMATSU

profile  

宮本 涼平 Ryohei Miyamoto

1988年いわき市小名浜生まれ。湯本高校を卒業後神奈川大学経営学部へ進学。現在4年生。生まれ故郷のいわき市のために若い力を結集しようと、2010年10月に地域活性化団体 iups を設立し、今に至る。 

 

 

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コメント: 1
  • #1

    ムッシュ香月 (月曜日, 01 12月 2014 12:25)

    なにか分からない
    なんでか分からない
    でも気になる
    UDOK!
    小松さん!