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「モノクロ写真」といっても、単に「白黒」なだけではない。その表現の奥深さ、そして豊かさに、改めて驚かされる。いわき市平のギャラリー「コールピット」で開催中の「トリクローム」。写真を撮る人だけではなく、アートやクリエイティブに興味のある人に全員に、ぜひ見て頂きたい写真展だ。
いわき市平のギャラリー「コールピット」。事務所を改装したシンプルな空間に、上遠野真人、鈴木穣蔵、白圡亮次という、いわき市を拠点に活動する3人の作品が展示されている。三者三様のモノクロ表現が面白い。

上遠野は砂の陰影を、白圡は花を、鈴木は家族を撮影している。同じモノクロ写真というジャンルではあるが、アナログとデジタルの組み合わせや、出力に使われるインクや紙の違いが出ており、その表現の奥深さに驚かされることだろう。
白圡の作品は花。陰影を抑え、平面的に写されているためか、奥行きがあまり感じられず絵画のようにも見える。輪郭はソフトで、白と黒、そしてその間にある無数のグレーが、優しく花のディテールを描き出す。背景の黒は強く、それが花の艶かしくや滑らかさを浮かび上がらせているように見える。
上遠野が写す砂は、自然のフラクタルな構造を強く感じさせる。砂浜を接写しているようにも、広大な砂丘を遠目から撮影しているかのようにも見えるのだ。砂の山に目を凝らすと、陰影が微細な点によって描かれ、その白と黒のコントラストが、見事に砂の静けさを浮かび上がらせていた。
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唯一「人」を題材にした鈴木は、自らのライフワークである家族写真を作品として展示した。白黒というと「ノスタルジイ」を感じる人もいるかもしれないが、鈴木の写真には、むしろ「時代性」を越えたところにある、普遍的な人と人との関係性が写されているようにも見える。
もちろん、見る人によって感じ方はさまざまだ。近づいて濃淡を見たり、離れたところから見比べたり、白黒写真の表現の豊かさにどっぷりと浸って欲しい。ギャラリーは平の中心地から少し離れたところにあるが、見終わったあとに、じっくりと町を歩きながら、トリクロームの余韻に浸ってみるのもよさそうだ。
information
Trichrome -トリクローム- 三人展
会期:2014年1月12日(日)〜2月2日(日)
開館時間:9:30〜18:00
会場:ギャラリー コールピット いわき市平字紺屋町45紺屋町ビル3階
電話:0246-38-3152
URL : http://www.coal-pit.or.jp
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