いわき市中之作地区の景観再生を目指す「中之作プロジェクト」が、築200年の古民家を修復するために使う「藁縄」をなうワークショップを開催した。修復のための参加型ワークショップなどによって地域から参加者を集め、今後3年をかけて修復される古民家。今回作ったこの藁縄は、古民家のどんな部分に、どのように使われるのだろうか。
text & photo by Riken KOMATSU
この日行われたのは、荒壁(土壁)を作る際に下地として用いられる「木舞竹・木舞縄」の材料となる「藁縄」を作るためのワークショップ。藁から縄をなうことを、いわきの言葉で「縄をもじる」と表現することから「わらナワもじりワークショップ」と名付けられている。
ワークショップの会場となった中之作の家「清航館」には、プロジェクトの会員や一般の参加者たちおよそ20名が集まり、縄もじりに挑戦した。多くの人が初めての体験ということで、最初は手先を器用に使うことができず悪戦苦闘したものの、いわきで左官職人をしている佐藤さん兄弟の指導のもと粘り強く縄をもじり続け、中には10メートル以上ももじった参加者も出現するなど、ワークショップは大成功となったようだ。
今回もじられた縄は、土壁の下地となる「木舞」の素材となる。木舞とは、細い竹の板を縦横に編んだもので、その竹を編むために藁縄が使われる。その木舞に泥を塗り付ければ壁の下地ができあがり、さらにそこに漆喰などを塗り付けることで、立派な日本家屋の壁が完成する。つまり、縄もじりは、家の壁の素材づくりとなる最初のワンステップなのだ。
稲作を通じて大量に生まれる「藁」。これを有効活用するために、先人たちはさまざまな工夫をこらしてきた。藁縄は、木舞だけでなく、いろいろなものを縛ったり、むしろを作ったり、土塀を雨や雪から守る「こも」などを作る材料となってきた。かつて藁縄もじりは農家の女性たちの「内職」として一般の家庭でも行われていたそうだ。藁縄は日本人の生活に密着していたのである。
中之作プロジェクト代表の豊田善幸は、今回のイベントについてこう語る。「古い家屋には、先人の知恵や技術がたくさん隠されているんです。それは、藁縄もじりのように、自然とともに限られた資源を有効活用するということでもあります。私たちが見失ってしまったライフスタイルのヒントが、藁縄もじりを通じて見つかるのではないでしょうか」。
豊田の言葉通り、参加者の多くが日本家屋に隠された奥深い文化を感じたようだ。参加者の一人は「昔の人はほんとうにモノを無駄にせずに、上手にいろいろなものを作っていたんですね」と感慨深い様子だった。また、「この藁が、次はどんなふうに使われるのかすごく楽しみです」という声も聞かれた。藁縄が、どのように木舞になり、どのように壁の一部となるのだろうか。
「みんなが一緒になって作れば、毎回が伝統建築を学ぶ機会になり、自分たちで修復したという愛着も湧くと思います。地域のシンボルとしてこの家が機能していくように、多くの人たちにぜひ参加してもらいたいですね」(豊田)。次回は、この縄を使って木舞を作るワークショップや、土壁をつくるワークショップも続々と予定されている。この家を修復していくことを通して、中之作のリアルな暮らしが見えてきそうだ。
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中之作プロジェクト
http://toyorder.p1.bindsite.jp/nakanosaku/index.html
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