2人がペアになって同じ1冊の本を読み、その本の中の文章をペンでなぞったり、メモ書きを残したりしながら1冊の「痕跡本」を作ろうというイベントが、来月、小名浜のオルタナティブスペースUDOK.で開かれる。その名も「異読会」。4月7日の開催を前に、企画した平子涼に「異読」について伺った。
text by Riken KOMATSU
小名浜在住のブックコーディネーター平子涼が提案する今回の「異読会」。その大きなテーマが「異読」と「痕跡」。「僕は友人への誕生日プレゼントなどに本を選ぶことがあるのですが、自分の読みたい本ではなく、別の誰かも読む本だということを意識すると、本棚の見え方がいつもと変わってくるんです。そこから異読の着想を得ました」。
異読会は、参加者が2人でペアになって本を選ぶことから始まる。その後、マーカーで印を付けたり感想を書き込んだり「痕跡」をつけながら互いに読み、読み終わったらまた参加者同士で感想などを共有する。「今回はあくまで実験的な試みですが、本を選ぶこと、そしてその痕跡をお互いに確認しあうこと、この2つの行為を通過することで、これまでの読書とは異なる読み方を知ることができるのではないかと考えています」。イベントの狙いについて、平子はそう語る。
本を選ぶ際、自分の興味だけでなく「自分も相手も興味がありそうな本」を選ぶことで、これまで手に触れることのなかった新しいジャンルの本を開拓できるチャンスが広がる。また、あえて2人とも興味がなかったものを選んだとしても、それはそれで新しい発見があるだろう。ペアを組む別の人とのコミュニケーションが、本を選ぶ際の新しい視座を提供してくれそうだ。
また、互いの痕跡を読み合うのも、相手の心の中に忍び込むような面白さがある。自分と違う箇所に痕跡がついていれば、多様な読み方を知るきっかけにもなるだろう。また、「相手が読むことを前提に痕跡をつけることで、積極的に読解するようになり、わかりやすく痕跡を書こうとする意志が働き、結果的に本の理解度も深まるかもしれません」と平子。このように異読がもたらすメリットは少なくない。
しかしながら、平子自身が「僕自身、異読がどのような効果をもたらすのか、なんの確証もないんです。どんな効果が生まれるのか、それを知りたくて今回の異読会を開催したというのが正直な動機です」と語るように、何が生まれるかわからないのも、異読会の醍醐味と言えるだろう。もしかしたら、メリットではなくデメリットのほうが見つかるかもしれない。
いずれにしても、本を選び痕跡を残すという行為は、そのどちらもペアで行われるため、その人とのコミュニケーション抜きに異読は成立しない。「本を読み解くことももちろん重要なのですが、今回の異読会は、本以上に『人』を知るきっかけになるような気がします」と平子。本を通して人と出会い、本を通して人を知る。本が媒介になり、さまざまな人たちが繋がっていくさまがイメージできる。
誰かと1冊の共有すること。そのことが、いったい何を生み出すのか。若干18歳のブックコーディネーターが仕掛ける異読会は、まさに「可能性だらけ」の読書会になりそうだ。
information
異読会
日時:2012年4月7日(土) 18:00 START
会場:UDOK. いわき市小名浜本町29-2
費用:無料(本の購入代金はペアで負担)
主催:bookpulse http://bookpulse.jimdo.com/
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watanabe (土曜日, 06 4月 2013 15:39)
結局、意味のよく解からん考え落ちに終始したね。震災後のドサクサに紛れひょこっと出てきた才能とやらには腹筋やられっぱなしだわw