震災1年を迎えるのを前に、震災直後に被災者たちがどう生き、何を見、どう感じてきたのかを知ってもらおうという展覧会「東日本大震災 いわきの『歩み』と『学び』展」が小名浜のいわき・ら・ら・ミュウで開かれている。日に日に復興の進むいわき市だが、今もなお続く被災者たちの仮設住宅での暮らし。この展覧会で、震災とはなんだったのかを今一度、自分に問いかけてみてはいかがだろうか。
text & photo Riken KOMATSU
会場を入ると、避難所を再現したブースが目に飛び込んでくる。ほんの11ヶ月前、多くの人たちが経験した避難所での生活。最後まで残っていた勿来体育館を最後にいわき市内の避難所は閉鎖され、被災者の暮らしは仮設住宅に移っている。私たちの目に触れにくい場所にあるためか、震災11ヶ月にして、被災者の日々の暮らしぶりは、たまに報じられるニュースくらいでしか確認することができなくなってしまった。
この展覧会は、そんな私たちの思考を巻き戻し、あの日々を思い起こさせてくれる。避難所のブース以外にも、「欠乏」、「被害」、「消防」などいくつかのテーマにわかれ、市民から寄せられた写真が展示されている。また、当時の食事や給水所を再現したブースもあり、実際に触れることで、震災を思い返し、これからの日々を考えるきっかけを与えてくれる。どの展示にも「現実」が収められており、1枚1枚を見るたびに、あの日起きた災害や、その後の混乱の日々を思い出す。
震災から間もなく1年となる。震災直後は同じような苦しみを分かち合ったものの、すでに震災前の生活を取り戻している人もいれば、仮設住宅で不便な生活を余儀なくされている人たちもいる。両者の生活環境の差は、ますます大きなものになってしまっているのが現状だ。かつては「団結」していた人たちも、今では状況はそれぞれ異なり、「バラバラ」は、震災直後よりも際立っているようにも思える。
しかし、この展覧会には、そうした個々のバラバラを超える「共通の体験」が数多く展示されている。地震の直後に感じた恐怖。不安な生活。給水所通い。ボランティアで助け合った日々。皆が同じように生活し苦しんだ日々の記憶は、誰もが共通するものだろう。そんな共通体験を今一度紐解くことにも、目の前のバラバラをつなぎあわせるヒントが転がっているのではないだろうか。胡散臭い響きしか感じられない「絆」という言葉の意味も、この展示の前では別の響きを持つかもしれない。
展示は、15分もあれば見終わってしまうシンプルなものだ。しかし、それぞれの人の心に去来するものは、15分間にとどまるものではないだろう。見終わってからのそれぞれの自問自答にこそ、この展示会の意味がある。間もなく震災1年を迎える。この展示は3月末まで開催されているが、ぜひ震災1年になる前に見ることをおすすめする。そして、そこで感じたことを、家族や友人や仲間たちと語り合ってみて欲しい。この展示は、そうした対話を今一度促す「きっかけ」を与えてくれるだろう。
information
東日本大震災 いわきの「歩み」と「学び」展
会期:2012年2月12日〜3月31日
会場:いわき・ら・ら・ミュウ
開館:午前9時〜午後6時
主催:いわき観光共同キャンペーン実行委員会
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Hiromi Yoshida (木曜日, 23 2月 2012 09:06)
製作者の頭の中を、すべて覗かれた感じの記事でした。的確過ぎて、逆に「怖い」(笑) KOMATSUさんのような方がいるなんて、いわきも、まだまだ棄てたもんじゃないですね。ホントに!今後の活躍をマジで、楽しみにしてます!(写真も、うま過ぎです。くださいw)
tetoteonahama (月曜日, 27 2月 2012 22:34)
吉田さま
コメントありがとうございます。
とんでもございません!! 何か書くネタがありましたら教えてください!