東日本大震災の影響で飼育生物の多くが死滅してしまうなど、大きな傷を受けていたアクアマリンふくしまが、ついに7月15日(金)に復活した。魚の数はだいぶ減ってしまったものの、各地に避難していた動物たちは健在。その不屈の精神は小名浜に力強い復興の明かりを灯している。
text & photo by Riken KOMATSU
アクアマリンふくしまは、3月11日に巨大津波をもろに受け、水を循環させる動力が損傷。燃料不足や停電などもあり、多くの魚が死滅してしまうなど、あまりにも大きな傷を受けた。死滅してしまったのは750種、20万匹にものぼる。いっぽう、トドやセイウチなどのほ乳類、鳥類などは日本全国の水族館が保護をつづけ、復活の時を今か今かと待っていた。
震災直後から、スタッフ総出で復旧作業にあたるなど、復活に向けて一歩一歩前進していく姿がブログで綴られ、多くのファンたちが勇気づけられてきた。そして7月15日、ようやく待ちに待った再開の日を迎えることとなった。再オープンの15日にはセレモニーも開かれ、「きぼう」と名付けられたゴマフアザラシの赤ちゃんを、メディアを通して見た人が多いことだろう。
かつての賑わいとは比べるべくもないが、tetote onahama が取材にいった日は土曜日ということもあり、家族連れが目立った。じゃのめビーチにもまばらだが子どもたちの姿が見られ、磯辺で遊ぶ賑やかな声が響いていた。水族館の周りはまだ復旧作業中の箇所もあり、震災の傷はあちこちに見受けられるが、この力強い復活に、まずは賞賛の拍手を送りたいと思う。
水族館の内部も、確かに魚の数は減ってしまったものの、潮目の水槽は健在。小名浜の近海の海の様子がダイナミックに展示されていた。サンマやメヒカリ、アンコウなど、小名浜の味覚とされる魚の展示もされており、充分に楽しめるラインナップになっている。一方、名物だったチンアナゴなどの魚類やウミガラスなど一部の鳥類の姿が見られなかったことに、影響の大きさが伺い知れた。
そして、何よりアクアマリンで働いているスタッフの表情が印象的だった。復旧作業の途中では、さまざまな混乱があったことだろう。多くの魚たちの死と向き合い、辛い毎日を過ごしたことだろうと思う。そんな極限状態の中で、ふるさとのこと、ふるさとの海のこと、アクアマリンのことを思い続けてきたのだろう。丁寧で温かな表情や接客に、アクアマリンで働くことの歓びが表れていた。
311の震災では、波をかぶる姿がテレビの映像に流れるなど、その被害の大きさがクローズアップされたアクアマリン。たいへんショックを受けた人も多かっただろうと思う。その後の原発事故が引き起こした海洋汚染などは、今でも大きな影響を及ぼしている。アクアマリンの目の前の信号はまだついていないし、そばの小名浜港では、いまだにまともな漁業ができていない。福島第一原発がいつ収束するのかも未知数だ。
しかし、アクアマリンの復活が小名浜復興の第一歩と考える人は多い。震災直後から館長の安部義孝さんが復活を目指すことを公言してきたのも、スタッフがブログを作り復活までの毎日の様子を配信してきたのもそのためだ。そうした思いが伝わり、さまざまな支援が寄せられる中で、一歩一歩復活の歩みを進めてきたアクアマリン。ついに復活の日を迎えられたことに、改めて大きな感動を感じずにはいられない。
まだまだ以前の賑わいを取り戻すには時間を要すると思うが、内部の展示だけではなく、じゃのめビーチやアクアマリンエッグも再オープンし、バラエティに富んだ企画展も健在である。アクアマリンエッグの釣り堀は特におすすめだ。ぜひ、遠方にお住まいの方も、アクアマリンふくしまに足を運んでもらい、小名浜の復興ために力をお貸し頂ければと思う。