オルタナティブスペースUDOKでは、現在、「弔いの壁」と呼ばれる作品を製作中だ。「弔いの壁」は、311以降の古新聞を使ってコラージュを作ってしまおうという作品。見出しや写真、記事を切り抜き、壁にのり付けしていく単純な作品だが、311以降の新聞を壁に閉じ込めることで、被災し、命を落とした方々への弔いを表すとともに、復興へ向けた第一歩を刻もうというメッセージを発する意図がある。
古い日本家屋のふすまや壁から、江戸時代頃の古文書などが見つかることがあるが、これは、誰かに宛てて書いた手紙や要らなくなった契約書などをふすまや壁の下紙として使っていた、ということに由来するものだ。その時代のドメスティックなものをふすまや壁の下地に使ってしまうというおおらかさ、意図せずそれを見つけた時の歴史的価値やサプライズといったものから、「弔いの壁」の着想を得たという。
新聞記事を使ったのは、その写真や記事に歴史保存の価値があるからだが、それに加え、当時の報道がいかに煽動的だったかという検証にもなりうる。壁面には刺激的な見出しが並ぶ。扇動的な報道に揺さぶられた被災者としてのマスメディアに対する義憤のようなものが壁に閉じ込められているようにも見える。
壁の大きさは10×2.5メートル。現在、横幅にして3メートル程度まで完成しているが、まだまだ全面の完成にはほど遠いところだ。作品をつくる、ということを通してクリエイティブの楽しさを感じるとともに、震災と向き合うためのきっかけにもなる。興味がある方は、古新聞を持ってUDOKを訪れてみてはどうだろうか。
会場:UDOK
いわき市小名浜字本町29-2
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